バイロン卿 (1788-1824)著
小日向定次郎 (1873-1956)訳
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全34エントリー(2007/11/01〜2007/12/04)
- 献辞
- 公告
- 彼のアテネ人テミトクレスの墓の下に打ち寄せる、
- 海賊の小艇は隱れるに都合のよい、下方の小灣に潜んで、
- 死の音訪れの最初の日の過ぎないうちに、
- 忘れられてはゐないあの勇士の住んだ國土よ!
- お前の國の海岸を踏む人は何を語り得ようか。
- 遠々と、暗らく、青海原を掠めて
- 眞急ぎに彼が逃げて行つたとき
- 彼は鐙を踏んで立つた──顏には何か恐怖の色が見えた。
- あの時は過ぎた、あの不信者は居なくなつた。
- その泉を滿した流れは涸れて
- 來る人の足音が、聽へはするけれども
- 東洋の春の昆虫の女王が
- 色Kいハツサンは妻妾の部屋には寄りつかず
- レイラの眼のKい魅力を話しても効はあるまい。
- 嚴格なハツサンは二十人の家來を伴ひ
- その一行は遂に松林のあるところへ着く。
- 一潟千里の勢いで川が眞Kくなつて
- 軍刀は柄元まで碎かれてはゐるが
- 草を食む幾頭の駱駝の鈴が鳴つてゐる。
- 因果を思ひ知らせる、地獄の鬼の大鎌に刈られて
- 彼處にゐる孤獨な希臘僧はどう言ふ名前の男なのだ。
- 薄Kい彼の僧衣の頭巾の下にぎろりと光る
- 地を引きずる長衣を身の廻りに褶しあげて
- にやけた柔弱な男は戀愛に走り勝ちである、
- 「神父樣、あなたは平和な生涯を過されて來られた、
- 「私は彼女が好きでした、大好きでした。──
- 冷たい風土の人間の血は冷たい
- 「さうです、全く愛は天來の光明です。
- 「彼女はなくなつて終つても私は生きて居ました。
- 「今はむかし、もつと靜かだつた時のこと
- 「今更想像の閃めきなど言つてくださいますな。
- 「こう言ふのが私の名であり、こういふのが私の物語です。