2008年02月22日

『短編バイロン詩集』18時(タイム)

  第十八、時(タイム)

  (一)

時!その專擅の羽翼の上に、
轉變常なき歳月は走らざるべからず。
その遲き冬と、速かなる春とは、
されど、我等をに驅追するなり──

  (二)

我が誕生に於て、御身を知れる萬物に知られし、
それ等の恩惠を附與せし御身を祝す!
されど我は今、獨り其重量を擔ふか故に、
我は御身の重荷を保持するこそよけれ。

  (三)

一人の愛者の胸も、我は、御身の與へし、
苦悶の瞬間を分けざるべからざるを欲せず。
御身は我が愛するあらゆるものを惜しむが故に、
我は御身の平和又は天國にあらんことを望む。

  (四)

我が愛するものには慰安ありて我は、
御身未來の不幸に惱まされざるべし、
我の御身に負ふものは只だ年月のみ、
その負擔は既に/\苦痛にて返償せり。

  (五)

尚ほ其苦痛さへ稍慰藉なりき、
そを感じたるも御身の威力は忘却せり、
悲哀の強き苦悶、懊惱は、
遲けれど決して時日を算せず。

  (六)

我は喜悦に於て御身の趨走の即ちに、
速より遲に下るべきを思ふて太息せり、
御身の雲霧は光明を掩ひ得るも、
夜に悲哀を増し得ざるなり。

  (七)

如何にわびしく陰沈なりと雖ども、
我が精神は御身の天空にふさはしかりき、
一星は獨り閃光を發して、
御身の無窮にあらざるを證す。

  (八)

その光輝も沈みて今や御身は、
凡て無氣力にして區々たる部分故、
數へられ詛はるゝ空虚の無能物と變じ、
萬物に惜哀せられ講説せらるゝに至る。

  (九)

或る光景は御身と雖ども變形し得ず、
そは未來の漂泊者の、熟睡の爲に、
我等の知り得ざる暴風雨を擔ふ時、
御身の遲速の制限なり。

  (十)

御身の晴らし得るあらゆる怨恨の、
無名なる一石の上に倒れざるべからざる時、
如何に弱く容易しく御身の努力の、
示さるべきかを思ふて我れ微笑し得るなり。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』56コマ〜


ラベル:TO TIME 児玉花外
posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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