2007年12月29日

『短編バイロン詩集』17二人の別れ

  第十七、二人の別れ

  (一)

胸のもつれを、一言ひとことも、
語らで別れ、あはれ唯だ、
落つるは、玉か將た涙、
如何に春秋、送らんと。
離別の後を、つく/゛\と、
思へば胸も、はり裂くる。
花にもまさる、なれほほ
あやしき迄でに、色あせて、
送るキツスの、冷やかさ、
まこと思へば、そのときに、
悲しき今日けふの、前示さきだつと、
神ならぬ身の、なさけなや。

  (二)

東のそらの、ほの/゛\と、
けゆく朝に、置ける露、
憂ひになやむ、我が身には、
みぞれの如く、冷やかに──
今のなげきの、知らせかや、
つれなく觸れぬ、我が頬に、
嬉しきなれの、誓ひごと、
凡てあとなく、れ果てゝ、
優しき汝の、そのほまれ
今や早や、いと、輕浮かろやかに、
聞きて、我が耳、汝が名を、
ひそかに耻ぢぬ、胸の内。

  (三)

彼等は呼びつ、我が前に、
呼びつ彼等は、汝の名を、
我れには響く、弔鐘かねのごと、
我は慄戰ふるひぬ、しかすがに──
あゝ如何なれば、その初め、
月も羞らふ、其姿、
かくも可愛ゆく、汝ありし、
彼等は知らず、我れの名を、
汝をよく知る、この我れを──
あゝ/\我は、悲しまん、
可憐いとしかりける、汝の爲め、
語るに深き、その煩悶なやみ

  (四)

我等は逢ひぬ、ひそやかに──
我等は嘆げゝり、靜やかに、
月とも花とも、めでたりし、
汝の眞情まごゝろうつろひて、
汝の心の、變りしを、
あはれ何時いつの世、何處にて、
懊惱もだゆる我の、汝に逢はゞ、
如何に語らん、この胸を──
千々に亂るゝ、此胸を──
あゝ沈默と、熱涙と!
あゝ沈默と、熱涙と!



底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』53コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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