2007年12月27日

『短編バイロン詩集』14カロライン嬢(二)

  第十四、カロライン孃(二)

  (一)

御身の斯くも暖かなる愛情を述ぶるを聞きし時、
愛人よ、我は信ぜずとは決して思はず、
そは御身の唇は疑心を止め而して又
詐かれぬ光を湛ふるが故なるべし。
御身の目は

  (二)

されど尚ほ、此溺愛する胸は憧憬あこがれ最中もなかに、
愛の、木の葉の如く凋落せざるべからざるを憾み、
記臆は愁然として涙を流し、
その青春の光景を追想する年月の來るを悲む。

  (三)

あはれ美しき高フ毛髮の色褪せて、
微風に淡く淋しく打靡き、
そのもとどりに交ぢれる白浪は、自然の
衰殘の餌食なを證するの時必ず來るを憂ふ。

  (四)

神はあらゆる生物の運命として定めし宣告を、
例令我れ、決して擅まゝに冐さずと雖ども、
一度は御身より我を奪ふべき死の爲めに、
愛人よ、我が形態は陰闇に掩はるゝぞよ、

  (五)

可憐なる懷疑者よ、情念の原因もとを誤る勿れ、
御身の戀人の心は必らず侵し得るなり、
彼は忠實なる信念を以て御身の容姿を崇拜し、
御身の一涙一笑能く彼を哀樂せしむるの力あり、

  (六)

あはれ愛人―死は早晩我等を追及し、
離れずと誓ふ我等の胸と胸は、
強風地球のふところに横はる死者を呼び、
我等を覺醒するまで墓に眠らざるべからず。

  (七)

あゝ!さらば能ふ限り、我等をして
情緒より迸する快樂の不斷の流を盡さしめよ、
我等をして心ゆくばかり愛の祝福多き酒盃を周過せしめよ、
下界にある、あらゆる美味佳香を飽食せしめよ。



底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』48コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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