2007年12月20日

『短編バイロン詩集』06ナポレオンの最後の訣別

  第六、ナポレオンの最後の訣別

  (一)

さらばよ、汝、フランスの土、
我が光榮の朦朧たる影の、
汝の名聲と共に地球を震撼せし處──
あゝ今や汝は、我を棄てたり──
さはれ最も赫耀にして、
最も幽暗なる汝の歴史は、
凡て我が名譽を以て充たさる。
我は世界と戰へり、
されど戰勝の運命は、
餘りに深く我を誘惑し、
我は爲めに破れたり。
我は又幾多の邦國と爭へり、
かくして遂に淋しくも獨り、
縲紲の身とは成り果てぬ。

  (二)

さらばよ、汝、フランス!
汝の輝く王冠を、
我が頭上に戴きしとき、
我は汝を以て地球の寶玉とし、
將た驚嘆となしたりき──
あゝされど汝の薄弱は、
我の汝を見出せし如く、又、
汝と別れざるべからざる悲しき命令を以てし、
汝の光榮は衰殘して、
汝の價値は沈淪せり、
おゝ哀哉、忠實の勇士や、
たとへ身を草原に横ふるも、
戰勝は長へに卿等のもの──
されどかの強鷲は一時殘害せられたりと雖ども、
燦爛たる勝利の日を其兩眼に凝視して、
今尚ほ、悠々として高く蒼空に※翔せり。

  (三)

さらばよ、汝、フランス!
若しも汝の邦土に再び、
自由の皷氣の襲來するあらば、
我を記臆せよ、然るとき──
優しき菫は今も尚ほ、汝の深き谷底に芽え出づる──
そは例令しぼみしとて、
汝の涙は再び咲かし得べし──
されど/\我は尚ほ、
我等の周圍に群れる、
數多の敵と爭ひ得て、
然して汝の精神は、
我が此音聲に覺起すべし──
我等を縛する鎖は破らざるべからず、
あゝ然るとき/\、
頭を上げて主を呼べ、
汝の權べる主を呼べ!



(二)※は「皐+栩のつくり」の「白」に代えて「自」、第3水準1-90-35、翺。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』28コマ〜

ナポレオン・ボナパルト - Wikipedia/Yahoo!百科事典


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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