2007年11月14日

『短編バイロン詩集』01若き令嬢の夭折

  第一、若き令孃の夭折

  (一)
美しかりし令孃の墳墓を我れおとづれて、
我が愛するむくろの土の上に、四季をり/\の花を撒き散らしゝ時、
嵐もさまず、夜もいとど淋しく靜やかに、
些の微風さへ樹梢を鳴らさず。
  (二)
此狹く小さき庵室の内に、嘗ては華やかに清かりし彼女かれの身は横はる、
死の神は彼女を餌食として取り押へ、
何等の富貴、何等の善美も、
美しき彼女が生命を償ひ得ず。
  (三)
あゝ!若しや死の神、憫憐を感じ、
皇天、運命の恐ろしき宣告を覆へしなば!
哀傷者はその悲愁を此處に現さず、
詩神ミユーズはその徳行を此處に語らざらん。
  (四)
されど何故の嘆ぞや、類なき彼女の精靈は、
壯麗、日輪を輝かし處を高揚し、
憂ひを湛へたる天使等は彼女をその宮殿に導びき、
無限の快樂を以てその徳行に酬ゆるなるに。
  (五)
皇天は不遜なる人類を招喚し、
而して秀絶の上帝は狂暴に非難すべきものなるや、
あゝ!否、斯の如きは我に無益の企圖わざ──
我は決して神に服從するを拒まざるべし。
  (六)
彼女の清き徳操は今猶ほ懷かしく、
その華麗なる容貌は今猶ほ記臆に鮮かに、
それ等を追想する毎に我が温き愛の涙滴りて、
胸に刻みし艶なる面影、長く/\思出の種となる。

此詩は千八百〇二年バイロンの十七歳の時の作にして死せし令孃の名をマガーレツトと云ひ海軍大將パーカーの娘にして彼の從妹に當る、バイロンの初めて詩を作りしは十四歳の時なり。




底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』16コマ〜


posted by 天城麗 at 01:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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