2007年11月13日

『短編バイロン詩集』バイロンの生涯(5/5)

▲バイロンの健筆は驚くべき程であつて、「海賊」は十日間になり、「アビードスの花嫁」は四日間に書き、「ラゝ」は舞踏會より歸宅して衣服を脱する間に作つたのだと云はれてゐる、斯く倉卒の間になりながら、然かも其筆の跡、絢爛流麗盤上玉を轉ずるが如く錚々の音を發するので、天品とはバイロンの詩句を評するに最も適切なる讃辭である、彼と同時代のゲーテは、彼を非常に賞揚して「バイロンは疑もなく當世紀(十九世紀)に於ける最大の才として尊ばざるべからず」と云ひ、スコツトムーアも甚だしく彼を讃美したのである、かくの如く賞揚せられ、歐米の文壇を風靡せし彼の詩篇は、世人に愛讀せらるゝこと非常にして、「海賊」の如き僅か一日に一萬四千部を賣つたと云はれてゐる。
▲バイロンの愛讀者は、舊約全書ポープの詩文及びモンテイヌの文集等であつて、特に彼はモンテイヌの文を激賞してあつた、彼は本國に於て嫌忌せられしに係らず、他の各國の人士に愛せられ、佛國人の如きは彼を崇拜の餘り其主府巴里にバイロン街を作つた位である。
▲バイロンの詩中最も人口に膾炙するは、「シロンの囚人プリズナー」であつて、宗教的迫害の酸苦を述べたのである。
あゝ我が頭髮は白し、されど年の爲にあらず、又は人々の一時の驚懼故に變ずるが如く、只だ一夜にして更りしにあらず、ああ我が四肢は衰へたり、されど勞せしが爲にあらず、實に忌はしき休息故に朽ちたるなり。
と歌ふところ、何んとなく悲愴凄婉であつて、一讀云ふに云はれぬ一種の冷かな物哀れな感じがするのである。
▲バイロンの文體は雄勁壯嚴の中に、典雅清艶な處があつて恰も天氣晴朗なる夜、縹渺たる蒼溟の波間に、皎々たる一輪の明月が鮮かな清光を宿せしが如く、又は巍然たる高峰の半腹に美しい虹の懸るが如く、壯美と優美は程よく融合一致してゐるのである、しかもこのニ種の美は、獨り彼の詩文の上に現はれてゐるのみならず、彼の一身にも實によく發現されてゐる、彼の欝勃の不滿と氣概はその壯美を示し、彼の女の如き美しい容貌はその優美を示してゐるのである、余は左に「チヤイルド、ハロルド巡遊記中の一句

(以下底本のページ欠)


posted by 天城麗 at 05:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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