2007年11月07日

『不信者』07/34

 お前の國の海岸を踏む人は何を語り得ようか。
  お前のいにしへの古い譚もなければ、
 お前の國のをとこたちがお前の國を辱めなかつた時の
 遠い昔のお前の詩の神のやうに高く、
  詩の神が翼を張つて、翔けり得る話題もない。
 お前の豁々のうちに育まれた人達の
 その火のやうな魂が息子達を導いて
  崇高な行爲をさせたかも知れないのに、
 搖籃から墓へ這つて行く。
 彼等は奴隸なのだ、奴隸のまた奴隸なのだ、
 ただ罪惡へ動くばかりの、一切無感覺の奴隸なのだ。
 人類を汚す邪惡と言ふ邪惡の色に染まつて
 野獸を殆んど撰ぶところがないのだ。
 野蠻な徳すら身につけてはゐず
 自由な或は雄々しい度胸のある人間なんて一人もないくせに
 隣國の港港へ持つて行くものと云へば
 名代の手管と昔しながらの術策なのだ。
 油斷のならない希臘の現状は是なのだ。
 世に知られてるのは此の爲めだ、この爲めばかりだ。
 奴役に馴致された精神を
 軛を求めて低げるその首を起さうとして
 自由がかつを入れてみたつて無駄なことだ。
 希臘の悲哀を私はもう慨歎かない、
 でもとの物語りは悼ましい物語であらう。
 で此物語を聽く人は信じてよいのだ、
 最初にそれを聽いた男は歎く理由があつたのだと。


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 不信者 | 更新情報をチェックする
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