2007年11月11日

『短編バイロン詩集』緒言

  緒言

バイロンは十九世紀の英詩人中最も偉大なる天才である、其詞藻や雄渾華麗であつて、其調や清新纎婉である、直にバイロンの詩文を了解せんと欲するものは彼を生み彼を造りし當時の社會と彼の性行境遇を知ると共に彼の如き絶倫の才氣思想を有しなければならぬ、殊に飜譯中最も至難の詩文を、語法、風習の異れる邦語に、完全に譯出することは、如何なる博學多才の人にも到底不可能である。加ふるにバイロンの如き奔放自在の詩想は、余の如き淺學短才のものの迚も其眞意の十分一も寫す事が出來ない、余は只だ英文の素養のない人々に、此偉大なる詩人の面影の或る一部を現はせばそれで滿足なのである。此書に譯せし彼の短詩四十篇は折にふれ時に感じ、新聞又は雜誌に掲載したのであるが、普通の七五調は彼の詩文に適せぬため概ね散文詩體に譯したのである、譯文は可成原文に忠實ならんことをつとめたが往々意譯した處もある、バイロンの詩は他の詩人の詩よりは多少難解であつて、意味も深邃であるから、吟唱數回漸くその意義を了解し得る如き個所もある、故に譯文の盡せないところは幾重にも讀者識者の叱正を得たいのである。
余は爾來一層研究を重ねてバイロンの他の長短を飜譯せんと心掛てゐる。
 明治四十年十一月
譯者識


ラベル:児玉花外
posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。