2008年08月03日

『短編バイロン詩集』33恋愛

  第三十三、戀愛

  (一)

戀愛は河川の如く
永久に流れ、又は
時日タイムの努力も
無益のわざなるべきか──
何等他の快樂も
戀愛の樂しさにくらぶれば、
實にものゝ數ならず、
而して財寶の如く我等は、
その鏈鎖を愛しぬ、
さはれ、我等の悲しみの、
死に終らずして、
飛ばんが爲に造られて!、
戀愛はその羽翼を飾る、
故に此理由により戀愛を、
一の時候ならしめよ、
されど其時候は
只だ温和なる春たらしめよ。

  (二)

戀人互に離別せば、
斷膓の感ありて、
あらゆる望みも破れ、
只だ死せんことを願ふ、
僅か數年以前、
あゝ!如何ばかりか冷やかに、
可憐いとしと思ふ彼女を、
彼等は眺め得ずば!
相共に結合せし際は、
如何なる月日にも
彼等は戀愛の羽翼より
その羽毛を拔き取るなり──
春過ぎしとき、
羽毛なきが故に、
愁然として戰けど
彼は長く/\留まるべし。

  (三)

叛徒の首領の如く、
彼の生命は活動なり──
彼の君權を拘束する
一種形式的契約は
彼の光榮を暗うし、
彼は暴君たらずして、
斯の如き領土を、
王冠と共に抛擲す、
されど/\進みつゝ
旌旗を翻へし
彼の威力を興揚して
彼は行動せざるべからず──
休息は只だ彼を飽食し、
退隱は彼を破滅し、
戀愛は衰殘せる王位を忍ばざるなり。

  (四)

數年は過ぎ去りて、
而して然る時に、
夢の如く醒るまで、
戀人よ、待つ勿れ!
然し、相互の、
衰弱を嘆げきつゝ、
憤怒嘲罵を以て
あらゆるもの惡むべく見へ──
然かも初めは漸衰すれども
尚ほ全く滅盡せず、
凡ての感情の困惱されて
損傷さるまで待つ勿れ、
若しも一旦衰へなば、
戀愛の君權は終りしなり──
然るときは友誼に於て別れ──
潔きよく離辭わかれを告げよ。

  (五)

斯の如く愛情は、
懷かしき連結を、
追想によりて
喜びを以て復活すべし、
疲れ、惡み、
御身の感念は靜止して、
飽食に至るまで、
御身は待たざりき。
御身の最後の懷抱は、
何等冷やかなる形蹟を殘さず──
均しくいとしき顏面おも
既往と變りなく、
御身の慕はしき過失の
鏡なる眼は、
只だ歡喜を反映し──毫も續かざるなり。

  (六)

實に飽かぬ離別は
忍耐も及び得ず、
如何なる絶望か
それより起りしぞ!
さはれ、尚ほ殘りつゝ
一度色青褪めて、
それ等の獄舍に反して
鼓動せし心臟は、
鏈鎖にあらずして何ぞや
時日タイムは只だ戀愛を飽かしめ、
有用は戀愛を破り能ふ、
羽翼を有せる小兒たる戀愛は、
只だ小兒にふさはしきものなり──
例令、鋭く、短かしとは云へ、
御身の喜びを滅失すべく、
御身はそを苦痛なりと悟るべし。



(三)拘は「てへん+勾」、第3水準1-84-72、抅。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』94コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。