2008年08月02日

『短編バイロン詩集』32丘上より遙に母校を臨む

  第三十二、丘上より遙に母校を臨む

  (一)

汝、我が少年時代の光景や、
その懷かしき追想は、過去と比較して、
いとゞ現在を辛からしむ、
そこは學問の初めて反省力の上にけ、
幻想の如き友情の構成されし處。

  (二)

そこは空想の、尚ほ、
友誼と惡戲とに合せし、
學友の面影を再び辿るを喜ぶ處、
汝の不滅の記臆は胸底深く止まりて、
希望拒むとも我如何に汝を歡迎するぞや!

  (三)

我は再び、我等の遊びし丘岡、
我等の泳ぎし河流、
我等の戰ひし原野を訪ひ、
聖賢の教を聞かんとて集りし、
鈴鐘高く響きたる校舍を尋ねぬ。

  (四)

我は再び夕暮の空淋しき頃、
獨り靜坐して永く/\/\、
瞑想の翼を恣にせし墳墓を見、
華やかなる夕榮の名殘を臨まんと、
我が彷徨ひし墓畔の高き懸崕を視たり。

  (五)

我は再び、ザンガの如く、我の、
敗亡せるアロンゾを蹂躙せる處、
傍觀者の群集せる居室を眺め、
而してマソツプを凌駕せりと自讃せし、
我が青春の虚榮心を興起せんとす。

  (六)

又は、リーアの如く、我は嘗て其處に、
己が娘の爲に奪はれし邦土と理性の、
深き/\呪咀を發言し、
聲高き讃美と自負に激せられ、
ガリツクの再生として自身を思ひたりき。

  (七)

汝、我が少年時代の夢や、
如何ばかりか我は汝を追惜するぞよ、
汝の記臆は長へに我が胸に宿り、
例令悲哀寂寥なりといへ我は汝を忘れ得ず、
汝の快樂は尚ほ想像の内に止まらん。

  (八)

運命、未來の蔭を轉ぜざる間は、
記臆は如何に屡我をアイダに回復すべき!
見分け得ざる暗K、
我が前面にある風景を掩ふてより、
過去の光輝は我が心に最も懷かしゝ。

  (九)

さはれ、我を待てる歳月の進行につれて、
よしや快樂のC新光景目に映ずるとも、
此思想歡喜を以て我を鼓舞する間は、
「あゝ!斯の如き月日は、少年の際、既に/\知れるなり」と我は云はん。


さはれ、我を待てる歳月の進行につれて、
よしや快樂のC新なる光景目に映ずるとも、
此思想、歡喜を以て我を鼓舞する間は、
「あゝ!斯の如き月日は、少年の際、
既に知れるなり」と我は云はん


(八)屡は「尸+婁」、第3水準1-47-64、屢。
(九)が編集の問題か、二種類掲載されている。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』91コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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