2008年07月30日

『短編バイロン詩集』29希臘西の恋愛歌(二)

  第廿九、希臘西の戀愛歌(二)

  (一)

美しく愛らしきハイデー、
我は毎朝花神フロラの休息する、
薔薇の花園に入りぬ、
實に我は御身によりて彼を見たり、
あゝ可憐なるかな、我は斯くも御身に切願す、
希くは我が口舌より此甘き眞實を受けよ、
我が歌は御身を羨仰せんが爲め發せども、
何を歌ひしかを思ふて尚ほ我が聲は戰くなり、
枝は自然子ーチユアーの命により、樹木に
香氣と果實とを加ふる毎に、
彼女の眼と、容姿とを通じて、
若く麗はしきハイデーの心は輝くなり。

  (二)

されど戀愛、園亭を棄てし時、
愛らしき其花園は忌むべきものとなる、
我にヘムロツクを持ち來れ──雜草は花よりも、
香ばしきが故に我が花園は快からず、
その毒の盃より注ぐ時は、
其杯を一層深く苦がくするならん、
さはれ御身の害惡を免れんとせば、
其飮料は我が心に甘かるべし、
あゝ殘忍なるかな、我は徒らにそれ等の恐怖より、
我が心情を救はんと御身に哀願せり、
御身は何物も我が胸に回復するものなきか、
さらば/\墳墓の門を開かれよ。

  (三)

豫め勝利を確保して、
戰はんと進む軍人の如く、
斯くして御身は劍槍にも似たる眼を以て、
我が胸底深く刺し貫きぬ、
あゝ語れ、我が心!只だ笑により散じ得る、
苦悶故に我は死滅せざるべからざるか、
嘗て御身の我れに抱かしめし希望は、
かくも甚だしく憂惱に對して報ゆべきや、
愛らしき然かも僞りのハイデー!
今や薔薇の花園は悲しきものとなりて、
あはれや花神も凋殘して休息し、
我と共に御身の不在を哀傷するなり。



(一)子ーチユアーの「子」は変体仮名「ね」。
『短編バイロン詩集』中に希臘と希臘西(ギリシャ)が混在しているが原文のままにしてあります。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』84コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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