2008年07月27日

『短編バイロン詩集』26カロライン嬢(三)

  第廿六、カロライン孃(三)

  (一)

あゝ!何れの時か墳墓は、
我が悲哀を永遠に葬るならん、
あゝ!何れの時か我が精神は、
此肉體より飛翔し得るぞや、
現在は地獄にして來るべき明日は、
新なる苦悶と共に今日の呪咀を持來る。

  (二)

一滴の涙も我が眼より流れず、
何等の呪咀も我が唇より出でず、
我は祝福より我を投げ出せる敵を憎まず、
何となれば斯の如き苦痛に際し、
愁然として女々しき悲哀を繰返すは、
これ精神の薄弱なるが故なればなり。

  (三)

我が眼は涙に更ゆるに、
劇げしき憤怒の火花を以て輝きなば、
我唇は、何等の流も鎭め得ざる、
強き火焔を呼吸するならん、
我が燃ゆる目眸まなざしは怨恨にて敵を射、
激怒を以て我が舌は其憤を恣にせん。

  (四)

されど今や涙と呪咀とは、
均しく効なくして只だ、
我等の壓制者の精神に歡喜を増すなるべし、
悲しき我等の別れを、
彼等平然として見得るならば、
無情なる彼等の心情は、それを見て喜ばん。

  (五)

例令我等に飽かぬ離別はせしものゝ、
されど、尚、人生の光は、
何等の喜悦も我等に與へ得ず、
此世に於ける愛と望とは、
何等の慰藉も持來さず、
人世は我等の恐懼にして墳墓は我等の希望なり。

  (六)

此世に於て、戀愛と友情とは、
永久に過ぎ去り逃れ去りぬ、
あゝ!何れの日か彼等は、
墳墓に我を置かんとはするぞ、
若しや幽瞑に於て我れ再び御身を抱くとも、
彼等は死者までも惱すことなかるべし。



(一)我が精神は、の「我が」は底本では「或が」。
(二)我が眼より流れず、の「我が」は底本では「或が」。
(三)焔は「火+稲のつくり」、第4水準2-79-87、㷔。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』74コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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