2008年07月22日

『短編バイロン詩集』21冷静此悩める肉体を蔽ふ時

  第廿一、冷靜コールド子ツス此惱める肉體を蔽ふ時、

  (一)

冷靜コールド子ツス、此腦める肉體を被ふ時、
あゝ!不生不滅の精神は何處を彷よふぞや、
死せず、止まらず、されど、
朽ち易すき塵埃を後に殘して去る、
斯くも肉體を離れて、一歩又一歩、
あらゆる星辰の天道を辿るるか、
然らずば萬物を監視する眼目なるもの、
直ちに空間の全面を滿たすならん?

  (二)

無限、無邊、無窮にして、
天地間の森羅萬象を見得る、
無形なる一思想は、
あらゆる萬物を監視し、召喚す、
過去の事に屬し朦朧と記臆に宿る、
種々の微弱なる形蹟を、
精神は一瞥して如何を見、
既往の凡てを瞬間に明白にす。

  (三)

物造者地球に人類を住せしむる前、
その眼目は混沌たる幽冥を廻轉し、
至高の天空の生せし處に、
精靈はその上昇する行道をもと
未來の損傷し又は造作する處に、
生成すべき萬物を通じて其瞥見を擴め、
而して太陽は滅せられ、軌道は破られ、
永遠に動かざるものとなる。

  (四)

天、愛、望、憎、恐、は、
凡て純潔清明にして冷やかに生き、
歳月は地球の歳月の如く流れ、
一年は一分の如く速かに走るなり、
遙か/\、一の羽翼なくして、
萬物を越へ、萬象を通じて、
死すべきものなるを忘れつゝ、
無名無涯なる其思想は飛び行くなり。



コールド子ツスの「子」は変体仮名「ね」、記臆、腦めるは原文のまま。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』63コマ〜


posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする
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