2008年08月01日

『短編バイロン詩集』31高慢なる婦人

  第三十一、高慢なる婦人

  (一)

あゝ思慮なき娘!何故に斯く、
他人の耳には無意義なることを現はすか、
何故に斯く御身の平和を破り、
將來の涙の種を造るや。

  (二)

あゝ輕卒なる處女、
只だ一時斯く爲めに語りし種々の愚事を、
憎むべき敵は潜に微笑しつゝあるに、
御身は反つて悲しむなるべし。

  (三)

高慢なる娘!若し御身は、
少年の言を信ぜば御身の嘆は近けり、
あゝ、其深き誘惑より免れよ、
然らずは僞善なる掠奪者の餌食とならん。

  (四)

御身は小兒らしき高慢を以て、
僞く爲めに人の發する言語を反覆するか、
若しも御身は強いてそを信ぜば、
平和希望御身の凡てを失ふべし。

  (五)

御身は今や女の侶伴の間にありて、
再び慰藉の空談を語るとき、
然かも虚僞の無益に掩はんとする、
その現はるゝ嘲笑に、注意せざるや。

  (六)

此等の空談は秘密なる沈默に終り、
公衆をして御身に注視せしめず、
如何なる謹深き處女か赤面せずして、
阿侫する遊冶カの讃辭を繰返さんや。

  (七)

あらゆる愚なる自負を語り、
皇天は其目の中にありと考へ、
然かも些細の虚僞を見能はざる彼女を、
如何で嘲笑好きなる少年は蔑まざらんや。

  (八)

此等青春の空談を語りて、
柔かき快樂を感ずる彼女に、
虚榮心の隱匿を防ぐる間は、
我々の言ひし又は書きし凡てを信頼せざるべからず。

  (九)

御身は己が美の支配を重せば、そを止めよ、
何等の怨憎も我に非難を命ぜず、
されど高慢心より斯の如き人を、
我憐れめども決して愛し能はざるなり。



底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』89コマ〜
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TO A VAIN LADY.

TO A VAIN LADY.

Ah, heedless girl! why thus disclose
What ne'er was meant for other ears;
Why thus destroy thine own repose,
And dig the source of future tears?

Oh, thou wilt weep, imprudent maid,
While lurking envious foes will smile,
For all the follies thou hast said
Of those who spoke but to beguile.

Vain girl! thy lingering woes are nigh,
If thou believ'st what striplings say:
Oh, from the deep temptation fly,
Nor fall the specious spoiler's prey.

Dost thou repeat, in childish boast,
The words man utters to deceive?
Thy peace, thy hope, thy all is lost,
If thou canst venture to believe.

While now amongst thy female peers
Thou tell'st again the soothing tale,
Canst thou not mark the rising sneers
Duplicity in vain would veil?

These tales in secret silence hush,
Nor make thyself the public gaze:
What modest maid without a blush
Recounts a flattering coxcomb's praise?

Will not the laughing boy despise
Her who relates each fond conceit--
Who, thinking Heaven is in her eyes,
Yet cannot see the slight deceit?

For she who takes a soft delight
These amorous nothings in revealing,
Must credit all we say or write,
While vanity prevents concealing.

Cease, if you prize your Beauty's reign!
No jealousy bids me reprove:
One, who is thus from nature vain,
I pity, but I cannot love.

January 15, 1807.
[First published, 1832.]


出典:
Byron's Poetical Works, Volume 1 by Baron George Gordon Byron Byron - Project Gutenberg
posted by 天城麗 at 01:00| Comment(0) | 英詩(English) | 更新情報をチェックする

2008年08月02日

『短編バイロン詩集』32丘上より遙に母校を臨む

  第三十二、丘上より遙に母校を臨む

  (一)

汝、我が少年時代の光景や、
その懷かしき追想は、過去と比較して、
いとゞ現在を辛からしむ、
そこは學問の初めて反省力の上にけ、
幻想の如き友情の構成されし處。

  (二)

そこは空想の、尚ほ、
友誼と惡戲とに合せし、
學友の面影を再び辿るを喜ぶ處、
汝の不滅の記臆は胸底深く止まりて、
希望拒むとも我如何に汝を歡迎するぞや!

  (三)

我は再び、我等の遊びし丘岡、
我等の泳ぎし河流、
我等の戰ひし原野を訪ひ、
聖賢の教を聞かんとて集りし、
鈴鐘高く響きたる校舍を尋ねぬ。

  (四)

我は再び夕暮の空淋しき頃、
獨り靜坐して永く/\/\、
瞑想の翼を恣にせし墳墓を見、
華やかなる夕榮の名殘を臨まんと、
我が彷徨ひし墓畔の高き懸崕を視たり。

  (五)

我は再び、ザンガの如く、我の、
敗亡せるアロンゾを蹂躙せる處、
傍觀者の群集せる居室を眺め、
而してマソツプを凌駕せりと自讃せし、
我が青春の虚榮心を興起せんとす。

  (六)

又は、リーアの如く、我は嘗て其處に、
己が娘の爲に奪はれし邦土と理性の、
深き/\呪咀を發言し、
聲高き讃美と自負に激せられ、
ガリツクの再生として自身を思ひたりき。

  (七)

汝、我が少年時代の夢や、
如何ばかりか我は汝を追惜するぞよ、
汝の記臆は長へに我が胸に宿り、
例令悲哀寂寥なりといへ我は汝を忘れ得ず、
汝の快樂は尚ほ想像の内に止まらん。

  (八)

運命、未來の蔭を轉ぜざる間は、
記臆は如何に屡我をアイダに回復すべき!
見分け得ざる暗K、
我が前面にある風景を掩ふてより、
過去の光輝は我が心に最も懷かしゝ。

  (九)

さはれ、我を待てる歳月の進行につれて、
よしや快樂のC新光景目に映ずるとも、
此思想歡喜を以て我を鼓舞する間は、
「あゝ!斯の如き月日は、少年の際、既に/\知れるなり」と我は云はん。


さはれ、我を待てる歳月の進行につれて、
よしや快樂のC新なる光景目に映ずるとも、
此思想、歡喜を以て我を鼓舞する間は、
「あゝ!斯の如き月日は、少年の際、
既に知れるなり」と我は云はん


(八)屡は「尸+婁」、第3水準1-47-64、屢。
(九)が編集の問題か、二種類掲載されている。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』91コマ〜
posted by 天城麗 at 00:00| Comment(0) | 短編バイロン詩集 | 更新情報をチェックする

ON A DISTANT VIEW OF...

ON A DISTANT VIEW OF THE VILLAGE AND SCHOOL OF HARROW ON THE HILL.

Ye scenes of my childhood, whose lov'd recollection
Embitters the present, compar'd with the past;
Where science first dawn'd on the powers of reflection,
And friendships were form'd, too romantic to last;

Where fancy, yet, joys to retrace the resemblance
Of comrades, in friendship and mischief allied;
How welcome to me your ne'er fading remembrance,
Which rests in the bosom, though hope is deny'd!

Again I revisit the hills where we sported,
The streams where we swam, and the fields where we fought;
The school where, loud warn'd by the bell, we resorted,
To pore o'er the precepts by Pedagogues taught.

Again I behold where for hours I have ponder'd,
As reclining, at eve, on yon tombstone I lay;
Or round the steep brow of the churchyard I wander'd,
To catch the last gleam of the sun's setting ray.

I once more view the room, with spectators surrounded,
Where, as Zanga, I trod on Alonzo o'erthrown;
While, to swell my young pride, such applauses resounded,
I fancied that Mossop himself was outshone.

Or, as Lear, I pour'd forth the deep imprecation,
By my daughters, of kingdom and reason depriv'd;
Till, fir'd by loud plaudits and self-adulation,
I regarded myself as a Garrick reviv'd.

Ye dreams of my boyhood, how much I regret you!
Unfaded your memory dwells in my breast;
Though sad and deserted, I ne'er can forget you:
Your pleasures may still be in fancy possest.

To Ida full oft may remembrance restore me,
While Fate shall the shades of the future unroll!
Since Darkness o'ershadows the prospect before me,
More dear is the beam of the past to my soul!

But if, through the course of the years which await me,
Some new scene of pleasure should open to view,
I will say, while with rapture the thought shall elate me,
"Oh! such were the days which my infancy knew."

1806.


出典:
Byron's Poetical Works, Volume 1 by Baron George Gordon Byron Byron - Project Gutenberg
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2008年08月03日

『短編バイロン詩集』33恋愛

  第三十三、戀愛

  (一)

戀愛は河川の如く
永久に流れ、又は
時日タイムの努力も
無益のわざなるべきか──
何等他の快樂も
戀愛の樂しさにくらぶれば、
實にものゝ數ならず、
而して財寶の如く我等は、
その鏈鎖を愛しぬ、
さはれ、我等の悲しみの、
死に終らずして、
飛ばんが爲に造られて!、
戀愛はその羽翼を飾る、
故に此理由により戀愛を、
一の時候ならしめよ、
されど其時候は
只だ温和なる春たらしめよ。

  (二)

戀人互に離別せば、
斷膓の感ありて、
あらゆる望みも破れ、
只だ死せんことを願ふ、
僅か數年以前、
あゝ!如何ばかりか冷やかに、
可憐いとしと思ふ彼女を、
彼等は眺め得ずば!
相共に結合せし際は、
如何なる月日にも
彼等は戀愛の羽翼より
その羽毛を拔き取るなり──
春過ぎしとき、
羽毛なきが故に、
愁然として戰けど
彼は長く/\留まるべし。

  (三)

叛徒の首領の如く、
彼の生命は活動なり──
彼の君權を拘束する
一種形式的契約は
彼の光榮を暗うし、
彼は暴君たらずして、
斯の如き領土を、
王冠と共に抛擲す、
されど/\進みつゝ
旌旗を翻へし
彼の威力を興揚して
彼は行動せざるべからず──
休息は只だ彼を飽食し、
退隱は彼を破滅し、
戀愛は衰殘せる王位を忍ばざるなり。

  (四)

數年は過ぎ去りて、
而して然る時に、
夢の如く醒るまで、
戀人よ、待つ勿れ!
然し、相互の、
衰弱を嘆げきつゝ、
憤怒嘲罵を以て
あらゆるもの惡むべく見へ──
然かも初めは漸衰すれども
尚ほ全く滅盡せず、
凡ての感情の困惱されて
損傷さるまで待つ勿れ、
若しも一旦衰へなば、
戀愛の君權は終りしなり──
然るときは友誼に於て別れ──
潔きよく離辭わかれを告げよ。

  (五)

斯の如く愛情は、
懷かしき連結を、
追想によりて
喜びを以て復活すべし、
疲れ、惡み、
御身の感念は靜止して、
飽食に至るまで、
御身は待たざりき。
御身の最後の懷抱は、
何等冷やかなる形蹟を殘さず──
均しくいとしき顏面おも
既往と變りなく、
御身の慕はしき過失の
鏡なる眼は、
只だ歡喜を反映し──毫も續かざるなり。

  (六)

實に飽かぬ離別は
忍耐も及び得ず、
如何なる絶望か
それより起りしぞ!
さはれ、尚ほ殘りつゝ
一度色青褪めて、
それ等の獄舍に反して
鼓動せし心臟は、
鏈鎖にあらずして何ぞや
時日タイムは只だ戀愛を飽かしめ、
有用は戀愛を破り能ふ、
羽翼を有せる小兒たる戀愛は、
只だ小兒にふさはしきものなり──
例令、鋭く、短かしとは云へ、
御身の喜びを滅失すべく、
御身はそを苦痛なりと悟るべし。



(三)拘は「てへん+勾」、第3水準1-84-72、抅。

底本:
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『バイロン詩集』94コマ〜
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